
マグロ・カツオは、原産国表記ではなく、原産地(生鮮食品)または、原料原産地(加工食品)で表記されます。
マグロやカツオといった魚、もちろん世界中の海で漁獲され、各国で消費されており、中でも日本は世界有数の鮪消費国です。マグロやカツオは様々な製品に加工され、ご家庭の食卓に並びます。
マグロやカツオは、未加熱処理の生食用生鮮商材から始まり、ネギトロや切落とし、カツオのたたきなど、生食用でも油脂・添加物等を添加、表面を炙った等の加工度が低い加工製品、ツナ缶、鰹節や角煮といった加熱処理を施した加工度が高い加工製品といった具合に様々な製品があります。
上記のうち、未加熱製品の生鮮食品及び生鮮食品に近い(加工度の低い(※))加工食品に対し、原料であるマグロ・カツオの原産地の表示が義務付けられています。
では、マグロやカツオといった世界中の海を回遊している魚に対し、原産“国”、とは、何をもって決められているのでしょうか??
この答えに対し、消費者庁がホームページ上【食品表示基準Q&A 第3章 生鮮食品 生鮮-29 】で回答している内容は、
『①世界税関機構(WCO)の協定に基づき、関税法施行令及び同法施行規則で、「一の国又は地域において狩猟又は漁ろうにより得られた物品」については当該漁ろう活動が行われた国(領海が属する国)、「一の国又は地域の船舶により公海並びに本邦の排他的経済水域の海域及び外国の排他的経済水域の海域で採捕された水産物」については、当該船舶が属する国が原産国である…
②水産物の輸入品についての原産国表示をする場合は、このような国際ルールに基づいて、漁ろう活動が行われた国及び漁獲を行った船舶が属する国が原産国となる…(一部抜粋)』としています。
簡単にまとめると、【漁獲した国の領海内であればその国に属し、それ以外は魚を獲った船が所属している国(船籍)を原産国】とした世界共通認識ルールであるということなんですね。
(参照:【生鮮食品品質表示基準Q&A (生鮮-32)水産物で輸入品の原産国はどのような基準で判断するのですか。】より)
つまり、日本の船が世界のどこ(他国領海以外)で漁獲しようが、日本産となり、外国の船が日本領海内で漁獲しても日本産となるのです。例えば、どこにも属さない公海で、日本船と外国船が横に並んで漁獲しても日本船は【日本産】、外国船は【外国産】になるんですね。中々興味深いお話ですね。
では、原産国、原料原産地の違いは?“国”と“地”の違いは何でしょうか?
原産国は、製品・原料が生産された国であることから、最終加工した地(国)のことであり、原料原産地は、原料が実際に生産・製造された国であります。水産物であるマグロやカツオであれば、船が所属している国が原産地または原料原産地になります。
食品表示ルールとして生鮮食品表示には、
(生鮮-56)業務用生鮮食品について、原産地の表示はどのようになるのですか。
1 加工食品の原料原産地名の表示の根拠となるものですから、業務用生鮮食品の 原産地の表示方法は、加工食品の原料原産地名の表示方法と同様に、国産品であるものには「国産である旨」を、輸入品にあっては「原産国名」となります。ただし、国産品にあっては、国産である旨の表示に代えて次に掲げる地名を表示することができます。 水産物にあっては、水域名、水揚げした港名、水揚げした港又は主たる養殖場が属する都道府県名その他一般に知られている地名…
と、あります。
一方、加工食品では、
(原原-16)原材料が生鮮食品である場合の原料原産地表示の国別重量順表示について、基本的な表示方法を教えてください。
1 原材料が国産品であるものには国産である旨を、輸入品であるものには「原産国名」を表示します。
2 ただし、原材料が国産品の場合、国産である旨(国産、日本、日本産など)に 代えて以下のような表示が可能です。
原材料が水産物の場合
水域名、水揚げ港名、水揚げ港又は主たる養殖地が属する都道府県名その他 一般に知られている地名の表示が可能。
以上のことから、マグロやカツオの水産物では、原産国という表示はせずに、生鮮食品も加工食品も表示は、原産地または原料原産地となっているんですね。
よって、日本船籍の漁船が漁獲した魚を使用した場合、【太平洋】、【太平洋(日本)】、【太平洋(静岡県)】等と表記がされています。
補足として、原料原産地は、場合によって異なる原料が複数含まれることや分かり易くするために標準和名を基本記載することになっており、例えば、ネギトロは、メーカー・製品によって違いはありますが、原料であるマグロ、副原料の油脂、酸化防止剤等の添加物が含まれています。原料原産地は、全ての原料、添加物から決定する為、多く含まれている順に明記します。ネギトロは大半がマグロですので、使用しているマグロの多い順となりますが、種類(黄肌・目鉢・ビンチョウなど)や原産国(国産・台湾など)が異なることがあり、鮪の種類によって原産国が異なることは多々ありますので、製品となった時に使用された原料の原産国の多い順に明記することになります。ルールとして複数含まれる場合、3か国目からは省略できる為、【国産、台湾、その他】となり、省略されることがあります。
最後にまとめとして、
・原産国とは、公海で漁獲した場合は、漁獲した船が籍を置く国名となる。
・生鮮食品(水産物)は、【原産地】として表記され、加工食品(水産物)は、【原料原産地】と表記される。
・生鮮食品(水産物(業務用))について、原産地(国産の場合)の表示は 水域名、地域名(水揚げした港又は主たる養殖場が属する都道府県名その他一般に知られている地名)の他、水揚げした港名を表示することが出来る。(例:太平洋、静岡県、焼津港、静岡県(焼津港)...など)
・国産の場合、【水域(都道府県名)】のように 【水域と地域名】を併記することもある。( 例:[太平洋(静岡県)] )
・水域名の表示が困難な場合、水揚げした港が属する都道府県名を表示することが出来る。(水域をまたがって漁をする場合等、水域名の表示が困難な場合)
・原産地が複数ある場合、含有率が多い順に明記し、3か国目からは【その他】と省略される(する)ことがある。
・輸入された水産物にあっては、原産国名に水域名を併記することが出来る。
スーパー等で食品を購入される方で原産地を気にされる方は、上記のポイントを押さえておくと非常に役に立つと思います。
※ 表面を炙った鰹タタキ、スライスした切り落し、細かくした鮪と油脂を混ぜたネギトロ等は、加工食品に分類されます。
○参照及び参考サイト:
消費者庁 食品表示法等(法令及び一元化情報)ページ
URL:http://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/
食品表示基準に係る通知・Q&Aについて
食品表示基準Q&Aについて 総合版
食品表示基準Q&Aについて 第1章 総則
食品表示基準Q&Aについて 第2章 加工食品
食品表示基準Q&Aについて 第3章 生鮮食品
食品表示基準Q&Aについて 第4章 添加物
※食品表示基準情報については、随時更新されていますので、消費者庁サイトにて最新情報をご確認ください。(2019年6月記事改訂、2020年1月リンク修正)