マルコ水産株式会社

マルコ水産のこばなし&雑学(豆知識)

知るとお得なお話>冷凍マグロは生マグロより新鮮?

冷凍マグロは、生マグロより新鮮?鮪は生より冷凍の方が新鮮である理由について

◆漁獲・凍結技術の向上により、
冷凍マグロの方が生マグロより鮮度が良いんですよ!



マグロと聞いて思うことは『高級』・『新鮮』・『美味しい』など、とても良いイメージがあります。高級料亭、廻らないお寿司屋さんでしか食べられないイメージが強いと思います。実際に流通する生マグロの数が少ない、冷凍していないという一種のブランドが重宝され、高級志向のお店が仕入れることで生マグロは一般にあまり流通せず、また、皆さんのお口に入る頃にはお値段もそれなりになっているんです。


実際のところ、そういった高級店さんは、職人さんの技術が非常に高く、きちんとした解凍方法をされていることで、とても美味しいと思います。また、店のブランドも影響 (高いから美味い、店が確かだから!っという先入観などの思い込み)も …一部あるのかもしれません。しかし、マグロの【鮮度】だけを考えた時、果たして『生は新鮮だから』の一言では片づけられないこともあるということを覚えていただけたらと思います。


それは何故か? 一般的な食材は、生より冷凍した方が鮮度・味が落ち、美味しさが損なわれることがほとんどです。そのほとんどは間違いないと思います。これは、食材の中に必ずある水分が影響しています。食材を冷凍した場合、細胞が凍ります。細胞の殆どは水分で構成されているため、水分が凍ると細胞内で氷の結晶化がおきます。この氷の粒が細胞を内部から傷つけ、破壊をすることで劣化が引き起こされてしまいます。これが鮮度低下原因の一部になるわけです。


魚や肉などを解凍すると薄い血の水がでませんか?これはドリップと呼ばれています。このドリップは、破壊された細胞から出た体液であったり、血液だったりします。食材からたくさん出てしまうということは、それだけ【細胞が破壊されてしまった=鮮度が落ち、美味しさが損なわれた 】っと、いうことに繋がっているんですね。
鮪の鮮度の相関関係,drip(ドリップ)について。ドリップとは肉等を解凍する時に出る血水(血液や体組織液)のこと。














マルコ水産のこばなし(鮪の冷凍について)

◆凍結温度が決め手!ドリップ原因の仕組み

 
では、鮮度を保つために、このドリップをどうしたら減らせるか?ということに話題を変えていきます。まずは、冷凍時に氷の粒がどうやって出来るのかを説明していきましょう。みなさんもご存知のとおり、水は0℃で凍り始めます。しかし、魚は0℃では凍りません。

これは、魚の体液には色々な成分が入っている為です。【海水(塩水)は0℃でも凍らない】と聞いたことありませんか?ものすごく寒い北極でも流氷は出来ますが、完全に凍ることはありません。これは、塩が水に溶け込んでいるためです。普通、水分子同士がくっつくことで氷が出来ますが、海水は、塩化ナトリウム分子が均一に混じっていることで、水分子同士を邪魔して結び付きにくくする状態になっています。

このため、0℃では凍らないのです。同様に魚も海水に影響され、わずかに体液内に塩分等が含まれている為、0℃では凍らず、-0.5℃~-5℃の間で凍っていくんですね。
この凍り付き始める温度帯を素早く通り抜けることがとても重要です!その理由はこの温度帯(-0.5℃~-5℃)に長くいるほど氷の結晶が大きくなっていくからなんですね。
鮪や鰹の凍結温度の違いによる鮮度保持の違いについて解説。ドリップを出さないように凍結するにはどうすればよいか




短い時間(急速冷凍、業務用-50℃以下)では、氷の結晶が小さく、粒の数が多くなるのに対し、長い時間(家庭用冷蔵庫などの-18℃以下)では、氷の結晶が大きくなり、数が少なくなります。これは、細胞内で先に水分だけが先に凍り始める為、残りの体液成分濃度が徐々に上がる(濃くなる)ことでさらに凍りづらくなることになり、全体が凍るまでの凍結時間が長くなることになります。

その為、氷が大きくなっていくことの原因になるのです。急速凍結では、冷気が温度を急速に奪い取ることでその時間を与えないため、結晶が小さくなるのです。また、氷になると水より体積が増えることなどから大きな結晶は細胞内部で膨張し、細胞の膜を傷つけ破壊してしまうことで解凍時に体液が細胞外へドリップとして出てしまうことが鮮度劣化の主な原因になります。

マルコ水産のこばなし(鮪や鰹は、家庭用冷凍庫(-18℃)では長期間保存できない。目安は1週間以内が望ましい)◆家庭で鮮度を保つためには?

では、家庭での保管はどうすればよいのでしょうか?基本的には家庭用冷蔵庫の冷凍スペース(-18℃)では、長期間の保管はお勧め出来ません。あくまでご参考ですが、長くて1週間を目途に食べられた方が良いと思います!(生食用の場合) これは上述の理由に加え、家庭では冷凍庫内温度が開け閉めにより不安定になること、【冷凍焼け(※)】を起こすことで鮮度が著しく損なわれるためです。マグロやカツオはとてもデリケートな商材であり、様々な要因(変色・酸欠・メト化・冷凍焼け等)が影響するため、長期保管が向かないのです。


それでも1度では食べきれない!という方に、一時的ですが保管する方法をご紹介いたします。
家庭で冷凍保管する場合、すでに凍っているものはなるべく乾燥を防ぐためにラップで水分が飛ばないようにして保管します。半解凍状態でカットが出来るようであれば、魚をある程度小さくカットするのが望ましいです。小さく切り身にすることで表面積を増やし、冷やすスピードを上げることが出来ます。例としてはサク(四角い刺身)を寿司ネタサイズに切り分けるなどが良いと思われます。しかし、スペースを取ることや再凍結は好ましくないため、あまりお勧め出来ません。


では、どうしたら良いか?数日中に食べる前提ですが、冷凍焼けを防ぐ意味も含めて、冷塩水(塩3%)に浸した濡れ布巾(化学雑巾)やペーパータオルを固く絞ってまぐろを包み、他の物と重なったり、くっついたりしないようにして、チルド庫(低温度帯)で保存しておけば2~3日は大丈夫であると思います。魚の購入時の鮮度に起因するため、あくまでご参考程度でお願い致します。


鮪は生より冷凍物の方が実は新鮮であるが、一番美味しいとは言ってない◆【まとめ】 冷凍ものは新鮮!!


【海のダイヤ】とも呼ばれるほど高級なクロマグロ(本マグロ)も昔(江戸時代)は保存が出来なかったため、とても食べられたものではないとアジやサバより低ランクな魚でした。現代では、技術革新による鮮度向上と共に嗜好も変化し、高級魚の一角を担っています。上述で述べたように鮪の保存方法は超低温技術に伴い、鮮度の劣化を防ぐことが可能になりました。

冷凍の場合、漁獲後、直ちに活〆され、船上で急速冷凍されることで鮮度が桁違いに良くなりました。また、冷凍技術向上によって-50~-60℃の超低温冷凍庫が備えられており、漁獲直後の鮮度がずっと保たれるようになったことで生きていた直後のマグロを手に入れられる時代になりました。一方、生の場合、船上でのマグロ処理の仕方は変わりませんが、マグロを氷詰め、または氷水で冷蔵保管し、帰港するまで時間(遠洋で長いと2~3週間)がかかるため、鮮度が変わってしまいます。
このことからマグロの鮮度は、生と冷凍どちらが良いか?と聞かれれば、冷凍≧生】が正しいという訳なんですね。


◆【新鮮】は、必ずしも【美味しい】ではないことを知ろう!
最後に、【では、冷凍マグロはの方が新鮮だから生よりおいしいのか?】という疑問が残るかと思われますが、

新鮮≠美味しいが当てはまるわけではないことをご紹介していきます。
肉は腐りかけが一番美味しい】と、よく耳にされることがありませんか?実は、マグロにも言えることなんです!

鮪の漁獲後の経過を見ていきましょう。
【生存 ➡ 死後硬直【チヂミ】 ➡ 熟成 ➡ 腐敗】


冷凍マグロの場合、漁獲後すぐに冷凍されるため、細胞が生きた状態の鮪がいます。このマグロは、チヂミ【縮み】と呼ばれるグレード(品質)で、最も新鮮な状態のものを指します。
細胞が生きているため死後硬直が起こり、筋肉が硬直(緊張)する現象です。例えば、サクを解凍した場合、色鮮やかになり筋状に波打ち変形することがあります。

この状態の鮪は鮮度が良すぎる為、身質が硬く(コリコリしている)、味も薄いと感じられ、美味しくないと感じる方もいらっしゃるかと思います。また、泳ぐために必要だったエネルギー源【ATP(アデノシン三リン酸)】と呼ばれる物質が死後に体内で徐々に変化し、 【イノシン酸(うま味成分)に変化していくことで鮪の味がより深みを増し、美味しくなっていくため、鮮度が良すぎるよりは程度を見極め【熟成】させることが最も美味しく食べる秘訣となります。

生マグロの一部においては熟成が進んだ状態のものもあり、職人さんの技術により適切な【解凍方法】・【食べごろ】を見極めることで、最高の状態のマグロが提供されているため、冷凍マグロより生マグロが美味しいというイメージが強いのかもしれません。